婚姻中の夫婦中が悪くなり、どちらかが自宅を出て別居するというケースがよくあります。その場合、別居中の生活費はどうなるのでしょうか。妻が専業主婦、夫の年収が500万円、子どもが小学生で、妻が子どもを連れて出て行ったというケースを考えてみましょう。

 夫婦は、法律上「相互扶助義務」(互いに助け合う義務)があるので、婚姻中である以上、収入の多い側が少ない側に生活費を支払わなければなりません。
 したがって、上記の例でいうと、専業主婦の妻は、別居した瞬間から、夫に生活費を請求することができます。
 そして、夫が任意に生活費を支払わない場合には、「婚姻費用分担調停」を提起し、家庭裁判所で支払額を決める手続を取ります。

 「婚姻費用」とは、大まかに言えば「生活費」のことであり、「分担」というのは、夫婦の収入に応じてそれぞれの負担額を決める、という意味です。
 調停で話し合いがまとまらない場合には、「審判」に移行し、裁判所が夫婦の収入に応じて「夫は妻に対し1か月あたり○万円を支払え」というように決めてしまいます。
 調停、審判いずれで決まっても、強制執行力が認められ、従わない場合には給与の一部を差し押さえられることがあります。

 ところで、1か月あたりいくら婚姻費用を支払うかについては、家庭裁判所裁判官らが作成した「婚姻費用算定表」(判例タイムズ1111号、家庭裁判所ホームページにも掲載)に基づくのが実務です。
 これによると、上記の例では、夫が妻に対し、1か月あたり8~10万円を支払うということになります。
 ただ、もちろん、算定表に機械的に当てはめるというわけではなく、個別の事情が考慮されることもあります。

 しかし、例えば、子ども手当や公立高校の授業料無償化は婚姻費用の分担額には影響しないとされますし(平成22年9月29日福岡高裁那覇支部決定)、 勤務先を退職して収入が減少したことを理由として婚姻費用の減額を申立てても、本来の稼働能力を考慮して、減額が認められなかったケースもあるので(平成22年3月3日大阪高裁決定)、基本的には算定表に従う運用がなされているのが現状です。
 ちなみに判例タイムズ1111号では、「婚姻費用算定表」とともに「養育費算定表」も発表されており、離婚後の養育費についてもこの表に基づき算定されています。