先頃、大阪の家庭裁判所において、「性同一性障害(GID)で男性から女性に性別変更した後に男性と結婚後、児童養護施設から子を引き取り、「母親」として、特別養子縁組を申し立て認められた」という報道がありました。
 男性から女性に性別変更した人が、特別養子縁組で「法的に」「母親」と認められるのは、おそらく国内で初めてのケースです。

 「性同一性障害」については、2004(平成16)年に「性同一性障害特例法」が施行され、それまで認められていなかった戸籍上の性別変更について、医師の診断等、一定の条件の下で認めることになったことから国内でも広く認知されることになりました。
 しかし、戸籍上の性別変更が認められたとしても、出生時に「男性」だった人が子どもを産むことのできる機能を有するわけではない上、民法は、「子どもを出産した者を母親とする」ことを前提としており、裁判所の対応も統一されていませんでした。

 この点、性同一性障害の当事者の親子関係をめぐって、昨年12月に、最高裁判所が注目すべき決定を出しました。
 女性から性別変更した男性について、その妻が第三者との人工授精で出産した子との嫡出関係を初めて認めたのです。

 それまで、男性から女性に性別変更した人が母親になるための道は、結婚前に子を設けた男性と結婚してその子と養子縁組をするしかなかったのですが、上記ふたつの決定は、他の選択肢を認めるものですので、画期的といえるでしょう。

 ただし、実務上は、里親になる(特別養子縁組を希望する)段階で通常の男女が優先されている実態があります。また、性同一性障害患者だけではなく、いわゆるセクシャルマイノリティのカップルに対する保護をどのように考えるのかという課題もあります。

 その意味で、さまざまな形態の「夫婦」について、「子」、「母」、「父」とは何かについて考えるべき岐路に我々は立っているのかもしれません。